厳選、遺品整理のこと

環境保全にかかる経費を具体的にいくらいくらと推定し、「軍事支出の6分1のから20分の1で」瀕死の重症の地球というこのホシを生き返らせることができる、として数字化してみせたのです。
たとえば、急激に進行する砂漠化を防ぐには90年に40億ドル、4000年には210億ドル、同様に植林には20〜70億ドル、代替エネルギーの開発にも20〜300億ドルなど、総額では90年時点で460億ドル、今世紀末には1500億ドルを投入しなければならないなどと推定してみせたのです。 この地球というホシの安寧をはなれて、一つ一つの主権国家やそれを構成する各国民の安全もありえず、生存すらあやうくされるではないか、というわけで実に説得力のあるグローバルそのものの議論でした。
国家の安全保障よりも人間の安全保障を、という、スウェーデンのP首相が熱心に唱え、旧ソ連のG大統領も追跡した考え方を、B氏も環境保全の立場から、具体的な数字をもって裏打ちしてみせたのです。 この考え方を同氏は、1922年にモスクワで開かれた環境問題と宗教についてのユニークな会議で、直接G氏にぶつけ、その賛意を手にしたのです。
実はこのモスクワの会議にはB氏ともども小生も出席し、G氏のほとんど哲学的ともいえる演説に深い感銘を受け、そのG案を触発したB提言に満腔の支持を送ったのでした。 なおここで余談になりますが、G氏に少し触れておきます。

同氏がB氏を尊敬しているとともに、B氏もこの旧ソ連大統領に対し、並々ならぬ敬意を払っているからです。 G氏は92年に地球規模のエコロジー組織「緑十字」を創設、その総裁に就任、次世代のために「人は自然の一部」という自覚を地球大で拡げるべく懸命の努力をはらっています。
91年には大統領の身をいわば追われたにもかかわらず、もともとが農民出身で大学院で農業経済学を修めたこともあって、土壌の侵触、大地の荒野化、水と大気の汚染などの問題にじかに直面し、自然とヒトとの関係に思いを深めていた彼は、その名も「緑十字」の創設に踏み切りました。 すでに83年のチェルノブイリの原子力発電の大惨事にソ連共産党書記長としてぶつかり、さらにその改革(ペレストロイカ)路線とグラスノスチ(情報公開)路線を押し進めていくのです。
G氏が世界に対して行った貢献はまことに巨大ですが、とくに情報公開と言論の自由により環境保全の力を世界大で推進していったことは、われわれ地球人の共通の感謝に値します。 Bさんのゴルバチョフもそういったところでしょう。
なおこれまた全くの余話ながら、さきごろ韓国の大統領になった金大中さんも、政治的に不遇だったときから、同じく不遇の身をG氏の高逼な理念に敬愛の念を惜しまず、その緑十字活動に力を貸し、お互いに協力関係を続けたものでした。 金大中大統領の登場をいまG氏はどのような感慨で受けとめているでしょうか。
なお米ソの際限のない軍拡競争こそが地球環境にとって決定的な負の遺産を残した、というのがG氏の時代認識の最重要なものの一つですが、この点もB氏とは一脈も二脈も相通ずるのです。 因みにG氏はことし67才、B氏や不肖小生とも世代的にほぼ同じな点もあわせ思い出されます。
話をモスクワ会議に戻すなら「冷戦はいまや終結、世界は新しい時代を迎えている。 米ソにやる気があれば「環境安保」は実現可能だ」というB氏の発言には、重味がありました。
なおB氏は日本に対してはとくに大きな期待を寄せています。 「日本には地球環境を守り、回復させる歴史的な使命がある」とさえ断じます。
その理由ですが、朝日新聞の89年の8月22日号で同氏は次のように述べました。 「日本は立派な省エネ技術を持っている。
経済力で世界を引っ張っていく立場にある。 40年ほど前、米国はマーシャルプランで戦後の欧州の復興に力を尽くしたが、今度は日本が地球環境の保護、回復に責任を果たすべき時だ。

首相がだれであろうと、日本にそうした政治的意志(ポリティカル・ウィル)が生まれるのを期待している」残念ながらそういう政治的意志はこの国には生まれてきませんでした。 やがて湾岸戦争が勃発、日本は「国際貢献」とやらの美名のもとに、130億ドルもの国民の血税を、わけのわからない戦争遂行目的のために、むざむざむしりとられてしまったのでした。
B氏のせっかくの忠告にもかかわらずでした。 そして不肖小生が、『今日の問い、明日への答え」という12人の海外有識者との対談集の中で、「軍事力に代わる道義的代替集」と銘打ち、食料の増産や環境の保全など、非軍事的な面での寄与貢献こそが、非戦の憲法九条をもつ平和国家としての日本が率先して追求すべきテーマである旨を説いていた、にもかかわらずでした。
私は昔から関心のあった環境問題に対し、自分にできることを通じて役に立ちたいと、数年前からワールドウォッチ研究所の通訳/翻訳のお手伝いをさせていただいている。 研究所の隔月誌の日本語版への翻訳をお手伝いしたり、日本での講演の通訳をさせてもらったりする中でまた来日時の移動中の雑談などを通していろいろと大事なこと環境問題について、リーダーシップについて、自己を律することについて、勉強・研究の仕方についてRから教わっている.昨秋から私はワールドウォッチ研究所を日本で支援する環境文化創造研究所にも所属することになり、さらに緋が深まった。
環境問題を解決する上で、日本が経済的にも技術的にも重要な位置を占めていることは言うまでもない。 考え方や精神面でも西欧にないものを世界に伝え、導いていけると思う。
自然を慈しみ、自然と共存する生活を昔の日本人は無理なく実践していた。 最近よく聞かれる「ゼロミッション」にしても、鎖国をしていた江戸時代にすでに他国とのやりとりなしで、自国内ですべてをまかないすべてを処理していた日本にとっては、新しい概念でも何でもない。
通訳をしていてよく訳しきれずに困ることばの一つが「もったいない」だが、この「何も無駄にせず活かし切らないとお天道様に申し訳ない」という感覚も、日本(東洋)独特のものかもしれない。


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